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ウガンダ
生計向上支援と母子の栄養改善事業

ウガンダは一人当たりの所得が低いという問題を抱えています。特に農村地域の母子の保健サービスへのアクセスや栄養不良が深刻で、その結果、乳幼児の発育や認知機能、学習能力に悪影響を及ぼし、子どもの発育を妨げています。そこで、ウガンダ西部地域のカセセ県の母子を中心に、保健医療施設での栄養啓発活動を行い、生計向上支援及び母子の栄養改善事業を行いました。

第3年次活動報告(2)

ウガンダ国カセセ県における生計向上支援と母子の栄養改善事業 第3年次

ウガンダでは、国民の69%が農業に従事しており、農業が同国GDPの23%を占めています。 これを背景に、同国政府の「国家開発計画」では農業を経済開発の中心セクターの一つとして、その成長を推進してきました。特に農業産業化及び農業競争力の強化を挙げ、国民の食料安全保障向上を推進するとしています。

一方で、人口一人当たりのGNIは、世界192か国中178位(780米ドル)に位置し、一人当たりの所得が極めて低いことが深刻な課題でもあります。
所得水準が低いことにより、特に農村地域の母子の保健サービスへのアクセスや栄養不良の状況は依然として厳しい状態にあります。5歳未満の子どもの発育阻害(身長が年齢相応の標準値に満たない慢性的な栄養不良)は29%であり、最低食事水準を満たす乳幼児の割合は14%に留まっています。また、鉄分不足により、6か月以上5歳未満の子どもの53%、15-49歳の女性の32%が貧血です。乳幼児期の低栄養は、身体機能だけでなく認知機能や学習能力の低下に繋がり、また、妊娠可能年齢女性の低栄養は妊娠した際の胎児の発育を妨げる大きな要因の一つとなっています 。

本事業では、ウガンダ西部地域の中でも栄養不良の割合が他と比較して高いカセセ県の母子を支援の対象とし、地域の保健医療施設での栄養啓発の活動を促進する他、農家の生産力や農業の知識向上に向けた支援活動に取り組んでいます。また、サラヤでは、これまで10年間以上に渡り、ウガンダにおける「100万人の手洗いプロジェクト」を実施してきました。とりわけ、新型コロナウイルス感染症の影響がある中、普段にも増して、手洗いの励行及び衛生環境の保持が強く推奨されています。これまでの取り組みがウガンダでさらに根付くよう、本事業では受益者や保健医療施設に対して、サラヤの衛生用品(手指消毒剤)を積極的に導入し、その使用を進めてきました。

活動内容

1.生計向上

養殖池の様子 (マリバ準郡 2022年11月)

 カセセ県内のニャキユンブ準郡及びマリバ準郡の受益者に対し、家庭菜園を含めた農業を促進し、より多くの種類の野菜・果物を摂るよう指導してきました。これにより、母子、農家世帯の体調改善、収穫・収入増といった成果があげられてきました。

 今期はさらに魚の養殖にも力をいれました。水資源が豊かなウガンダ中・西部には有名なビクトリア湖以外にも、複数の大きな湖があります。カセセ県ではエドワード湖やジョージ湖と隣接しており、伝統的に地域住民は魚(ティラピア等)を食してきました。


 しかし、近年は湖での魚の乱獲増加により、政府が捕獲を制限するなど国内価格が高騰しています。普段の食卓に魚料理を用意することが難しくなり、特に、湖から離れた地域に住む貧しい地域ではほとんど食べることができないそうです。そのため、本事業でこれまで支援を受けてきた現地の人々から、山中で魚の養殖に挑戦したいとの強い要望を受けました。
 事業活動の持続性を確保するために、初期の段階から受益者の主体性を育むことが重要と考え、「養殖池に必要な土地の取得は自分たちで行うこと。」という条件を提示しました。すると、その後すぐに現地の人々が会議を開き、各家庭の貯蓄及び家庭菜園の野菜販売収入を借地に充てることを決定し、わずか2か月で目標額を集めました。


魚のエサ作りの研修   (ニャキユンブ準郡 2022年11月)


水揚げされたティラピア (ニャキユンブ準郡 2022年12月)

 以降、大きな資機材の購入は事業資金を活用しつつ、その土地で安価に手に入る資材は地域住民自身で資金を工面し、活動を進めてきました。建設の段階では、県農業局の専門家にアドバイスを受けながら、掘削、池の設計、土壌成分の調整、注水、フェンス張り等、全て住民の手で行いました。貯水を終えた2022年8月、一匹あたり3グラムのティラピア稚魚を8千匹放流し、これまで順調に成長しています(成魚で300~600グラムほど)。
 またその過程で、魚のエサを効率的に確保することが重要なため、ウガンダ農業・畜産・漁業省の水産局から講師を招聘し、「エサ作り」に関してカセセ県で研修を実施しました。このエサの中心となるのがBlack Soldier Fly(アメリカミズアブ、以下BSF)です。安価でサステイナブルかつ栄養分が豊富な昆虫として、動物飼料としても注目を集めています。研修では、まずBSFの巣箱を用意し、エサとなるメイズや野菜、動物の糞便などを集めBSFを育てること、次にそのBSFが産んだ卵から孵化した幼虫をさなぎの状態で魚のエサとして利用することを学びました。実際にBSFを魚に与える際は、メイズなどの穀物や小魚の粉末を混ぜて粒状にし、非常に栄養分の高いエサとして給餌します。さらに、成魚になるまでのケアとして、定期的に身体測定(体長、重量)をし、池の水質にも十分注意を払いながら管理するよう指導がされました。



 ニャキユンブ準郡では40世帯の農家が養殖場の運営に従事してきましたが、2023年1月時点で、漁獲量全体の約35%を自分たちの食料及び近隣住民への廉価販売に充て、残り65%を市場で販売しています。前者では、各家庭で「煮ても揚げても、とても美味しい!家庭菜園でとれた野菜と一緒に調理しています。」とお母さんや子どもたちから喜びの声が上がっているほか、「市場では買えない価格で売ってくれるので、ようやく魚を食べることができている。ありがたい。」と感謝されています。
 また魚の販売により、25万円以上の利益が出て、各農家の生計が飛躍的に向上しています(農家の平均月収:約7千円)。その利益は主に、次の養殖サイクルの準備金や村の貯蓄委員会への追加投資に充てられており、ニャキユンブ準郡ではもう一つの養殖場を建設する資金として大切に蓄えられ、これからの生計の拡大に寄与します。



家庭菜園でリンゴを収穫するハリエットさん (マリバ準郡 2022年11月)

(受益者の紹介)
 
 私(ハリエットさん、写真左)はセーブ・ザ・チルドレンの生計向上支援と母子の栄養改善事業に2021年3月から参加しています。以前は、栄養という概念を知らなかったため、年中家の目の前にある作物(バナナ、とうもろこしなど)を食べていました。この事業の栄養研修に参加してから、もっと栄養のある色々な種類の食べ物を摂取しないといけないことを学び、家庭菜園を始めました。今では、バナナ、とうもろこしの収穫が大きく増えたことに加え、菜園で採れたトマトやナスなどの野菜を毎日の食卓にのせることによって、家族の健康と生活に余裕が出てきたことを実感しています。
 少し前まで夫は体調が悪いことが多かったのですが、現在は体力が戻り、魚の養殖現場に出かけて管理の手伝いをしています。彼は常々、「養殖に携わることになって、近所の人たちとのつながりも増えた。子どもたちに栄養の大切さを魚や野菜を見せて教えているんだ。村民の一人として、非常にやりがいを感じている。」と言っています。この事業は、私にとっては家族の愛を育む農園・菜園、私の家族にとっては地域住民としての責任を担う充実感を意味し、自分たちの人生は自分たちで拓いていくものだ、やればできるのだ、ということを教えてくれました。心から感謝します。


2.栄養改善支援

(活動紹介)



 さて、上記のとおり、より多くの食品群から栄養を摂ることが大切だと分かった現地の人々ですが、男性は元より女性からも「今までにほとんど扱ったことのない食べ物なので、どうやって調理すれば良いか分からない。」といった声が多く上がります。
そこで当事業では、支援対象の保健医療施設にて、受診に訪れた母子や父親に対し、食材を食品群別に紹介し、調理実演を実施しています。炭水化物(エネルギーを作る)、タンパク質(身体をつくる)、ビタミン・ミネラル等(身体の調子を整え、エネルギーを作り出すサポートをする)に分けて説明し、それぞれの働きと当てはまる食材を紹介します。


保健医療施設での食材研修 (マリバ準郡 2022年11月)



 続いて、保健施設職員や当会の保健ボランティアが調理実演をします。野菜や果物のむき方、肉や魚の加熱の仕方、タンパク質が足りない場合はヤギや牛のミルク、玉子などを少し入れると補えることを説明します。現地の人々が今まで慣れ親しんでいる方法から逸れないように、しかし新しい食材にどんどん挑戦してもらえるよう、視覚的にも工夫しながら指導しています。そして、調理が終われば参加者に味見をしてもらい、各家庭で受け入れやすい味かどうか意見を聞きます。家庭によっては、「もう少し塩を入れた方が良い。」、「ミルクを入れると、こんなに美味しいのですね。」と率先して発言してくれ、それぞれの反応は非常に興味深いです。



 本事業の趣旨を理解した男性で、調理実演に積極的に参加してくれる人々も多くなってきています。「台所、調理は女性のもの、といった固定観念は置いておいて、まず栄養を家族全員が摂ることが大事だ、というメッセージを村の男性に広めたい。」と述べる村長もおり、本事業の成果が確実に浸透していることを実感します。


調理を実演するマーティン村長 (マリバ準郡 2022年11月)



【2023年3月以降の活動予定につきまして】
 ウガンダでは、新型コロナウイルス感染防止に関する措置(マスク着用等)は緩和されてきたものの、2022年9月には国内中西部でエボラ出血熱が発生し、当会事業においても日々の衛生管理を徹底しています。特に今年次事業では、カセセ県政府内において、栄養セクターの啓発・アドボカシー強化を目指しており、政府関係者と連携しながら事業終了後も彼らのイニシアティブで栄養改善活動が継続していくよう努力してまいります。カセセ県での本事業は2023年2月をもって完了いたしますが、セーブ・ザ・チルドレンは今後も、ウガンダ政府と連携・協働しながら、地域の人々が心身ともに健康を保ち、かつ前向きにこの困難な時期を乗り越えることができるよう、支援を続けてまいります。


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