妊娠中のつわりはいつから~いつまで?よくある症状や上手な付き合い方
監修:古市 菜緒
- プロフィール
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助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。
妊娠の喜びも束の間に、気がつくと現れているつわりの症状。妊娠したばかりのママは、つわりがいつから始まり、いつになれば終わるのか、心配になるでしょう。すでにつらい症状に苦しんでいるママは、いつ終わりが見えるのか、どうすれば症状が軽減するのかを知りたいことと思います。
今回の記事では、つわりの症状や期間、対処法についてお伝えします。ぜひパートナーと読んで、一緒につわりに対する理解を深めましょう。
妊娠中のつわりはいつからいつまで続くの?
個人差はありますが、つわりは妊娠初期の5週目~6週目ごろから始まり、8週目~10週目ごろにピークを迎え、安定期に入ると症状が軽快し落ち着く場合が多いです。
つわりの開始時期と経過について詳しくお伝えしていきます。
つわりが始まるタイミング
つわりは、妊娠初期の5週目~6週目ごろから始まります。妊娠初期に「なんとなくにおいに敏感になった」「食欲がなくなってきた」と感じて徐々に症状が重くなっていく場合や、5週目〜6週目から症状がはっきりと出る場合など、症状の始まり方はさまざまです。
始まるタイミングには個人差があり、早い人は4週目ころから症状が出る場合もあります。なかには、生理予定日が遅れ、月経前症候群の症状と思っていたところ妊娠のつわりだったケースもあるようです 。
つわり自体は、妊婦の50〜80%に起きるとされる症状のため、不安をいだく必要はありません 。ただし、症状の重さや、期間は人によってばらつきがあります。
つわりのピークと終わり
つわりは妊娠8週目~10週目ごろに症状のピークを迎える場合が多く、10週目以降から徐々に症状が軽減し、16週目ごろまでには落ち着く場合が多いです。つわりの終わり方にも個人差があり、しだいに症状が落ち着く場合もあれば、ある日突然、吐き気や気持ち悪さが消失するパターンもあります 。また、少数ながらも出産直前までつわりが続く方もいます。
つわりの原因
つわりの原因は、はっきりと解明されている訳ではありませんが、母体がホルモンバランスや体の変化にすぐに適応できないためとされています。特に、妊娠してから分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが脳にある嘔吐中枢を刺激するという説が有力です 。加えて、環境の変化や心理的なストレスも原因の一つとされています。
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つわりでよく起きる症状
次に、つわりでよくみられる症状についてお伝えしていきます。つわりの典型的な症状の出現パターンは、初期に「胃がムカムカする」「何だか気持ち悪い」「においに過敏になってきた」などを自覚し、ピーク時には強い吐き気、嘔吐、食欲不振が出現するというものです。ただし典型的な症状以外にも、さまざまな種類の症状が起こります。症状の現れ方は個人差が大きいため、代表的なものに絞って解説していきます。
吐き気が続く「吐きづわり」
「吐きづわり」は、妊娠初期に多くみられるタイプのつわりです。胃もたれや胃のむかつき、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。常に吐き気がして、何かを食べてもすぐに吐いてしまうという状態です。
「吐きづわり」では、栄養不良や脱水、低血糖を予防する必要があります。おかゆ・豆腐・アイスクリーム・ゼリーなどの水分を多く含んだ自分の食べやすい物を口にしましょう。また、吐きやすい形状のものを食べる、吐くのを我慢しないなどを心がけましょう。症状がひどくなる場合は、無理をせず早めにかかりつけの産婦人科に相談してください。
食べていないと気持ち悪くなる「食べつわり」
「食べつわり」は、空腹になると気持ちが悪くなるタイプのつわりです。食べ物を胃に入れると気持ち悪さが軽減するため、「常に何かを食べている」状態になりがち。下の表の目安を大きく超える過度の体重増加や血糖値の上昇は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病などのリスクになります。カロリーの低い物を小分けにして食べるなど、摂取方法を工夫しましょう。
妊娠前のBMI | 妊娠前の体型 | 体重増加の目安 |
---|---|---|
18.5未満 | やせ型 | 12~15kgの増加 |
18.5~25.0未満 | 普通体型 | 10~13kgの増加 |
25.0~30.0未満 | 肥満体型 | 7~10kgの増加 |
30.0以上 | 高度の肥満体型 | 5kg以内の増加 |
においに敏感になる「においつわり」
「においつわり」は、特定のにおいをかぐと、気持ちが悪くなるタイプのつわりです。妊娠前は気にしていなかった食べ物や料理のにおい、自分が好んでいた化粧品、洗剤、柔軟剤などの香りが対象になるケースが多くみられます。また、ご主人のにおいが苦手になってしまう方もいるようです。
対象となるにおいが発生する場所を避ける、使用する製品を替えるなどが対策になります。
たとえば、妊娠すると使用する方も多い「マタニティクリーム」なども、無香タイプを選ぶと安心です。
また、毎日身にまとう衣類の洗剤も、無香タイプや香りが控えめな物を取り入れてみるとよいでしょう。においに敏感になっている時期でも使いやすい物を選んでください。
眠気がひどくなる「眠りつわり」
「眠りつわり」とは、体がだるく、常に眠い状態が続くタイプのつわりです。自律神経の乱れによって、睡眠時間が十分に足りていても、昼夜を問わず眠くなってしまいます。イライラなどの気分の変調や倦怠感、頭痛などを伴う場合も多いです。
「眠りつわり」が出現した場合は、無理をせずに十分休むことが重要です。
働く妊婦さんにとっては、仕事中でも急激な眠気に襲われるなど、悩みの種になります。つわりの症状に強い眠気があるのを知らない人も多いため、職場の理解を得ておく必要があるでしょう。また、体を動かす、冷水で顔を洗う、人と会話するなど、交感神経を優位にして眠気を抑える工夫も重要です。
よだれが止まらない「よだれつわり」
「よだれつわり」とは、自分の唾液を飲み込めず、口の中に溜まり溢れ出てしまうタイプのつわりです。常に口の中がねばねばして不快感があり、唾液を飲み込むのが苦痛で、吐き出すストレスが続きます。症状が進むと、自分の唾液で気持ちが悪くなり、吐き気を催す場合や実際に嘔吐する場合もあります。
唾液を吐き出したり(外出中はペットボトルなどを利用)、小まめに飲み物を飲んだり、アメやガムを食べたり、清涼剤で口をすっきりさせたりする対策を行います。脱水にならないように、水分を多く補給しましょう。
その他にも起こるつわりの症状
つわりは、ホルモンバランスの変化、自律神経の乱れを伴うため、これまで紹介した以外にもさまざまな心身の変化が生じます。たとえば、気分の変調(イライラ、不安感)、頭痛、味の好みの変化などが挙げられるでしょう。また、さまざまなつわり症状が一緒に現れる方も多くいます。おなかに新たな生命を宿し、胎児を育んでいくことは、母体に大きな影響を与えるのです。
つわりとの上手な付き合い方
つわりがあると、なかなか思うように過ごせない日も出てきます。しかし、つわりは半数以上のママが経験するもの。つわりとの上手な付き合い方を見つけていきましょう。
栄養については、思うように食事が摂れなくても、多少であればおなかの赤ちゃんの健康に大きな影響はありません。脱水症状や貧血、体重減少(妊娠前より5%以上の減少)などがなければ、無理して食べなくても大丈夫です。
精神的ストレスもつわりの要因になります。あまり心配し過ぎず、適度に気分転換をはかりながら、ゆったりとした気持ちで過ごしてください。ママ自身の体調を優先して、食べたい物を食べられる分だけ食べるという姿勢でよいでしょう。ただし、アルコールやカフェイン、生ものなど、妊娠中は摂取しないほうがよいとされている物には、引き続き気をつけてください。
軽くつまめる食べ物を常備する
つわりがひどいときは、1日3食にこだわる必要はありません。無理して食べると逆に体調を崩すことも多いので、食べられるときに少しずつ食べるようにしましょう。
いつでもすぐ口にできるように、飴玉やガムなどを携帯しておくと便利です。また、小さなおにぎりやパンを常備しておくのもおすすめです。ご飯は冷えたほうがにおいも少なくなって、食べやすくなります。パンは、保存しやすくにおいも少ない食パンやロールパンなどがよいでしょう。その他にも豆腐、アイスクリーム、プリン、ゼリーなども喉越しがよく食べやすいためおすすめです。
水分を積極的に摂る
つわりで注意すべきは、脱水です。吐き気で水分を十分に摂りにくくなったり、嘔吐で水分が失われたりして、脱水を起こしやすくなります。口が乾いたり、皮膚が乾燥して弾力がなくなったり、トイレの回数が減って尿の量が少なくなった場合は脱水のサイン 。脱水にならないよう、食事が食べられなくても水分補給には十分注意しましょう。
炭酸水や酸味のあるドリンクは、口の中をさっぱりとしてくれるのでおすすめです。嘔吐で失われた電解質を補給するため、スポーツドリンクや経口補水液もよいでしょう。ただし、糖分が含まれる飲料は、過度な摂取に注意してください。
サプリメントで不足した栄養を補給する
つわりで食べられないときは、サプリメントを活用するのもおすすめです。特に葉酸は妊娠初期に必要とされる栄養素で、妊娠前の必要量(240マイクログラム)の2倍以上の摂取が推奨されています(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」) 。つわりで苦しいときに、食べ物だけで十分な栄養素摂取しにくいため、サプリメントなどを上手に活用するとよいでしょう。
ただし、ビタミンAやヨウ素など、摂り過ぎに注意が必要な栄養素もあります。適切な摂取量を調べてから活用してください 。
心身ともに無理をしない
つわりと上手に付き合うには、無理をせずに心と体を十分に休めることが重要です。疲労やストレスは、つわり症状を悪化させる要因になります。パートナーの協力や職場の理解を得て、家事や仕事の負担軽減をはかりましょう。体調が悪ければ、無理せずに家事や仕事を休むようにしてください。ラッシュ時の通勤がつらければ、時差通勤なども相談してみましょう。
つわりがひどい場合は医師に相談する
つわりが重症化し、妊娠悪阻(にんしんおそ)とよばれる状態に移行すると、病院やクリニックで点滴治療が必要になります。激しい嘔吐を繰り返す、食事や水分が摂れない、意識がもうろうとする、つわり症状の出現前より5パーセント以上体重が減少した、などが妊娠悪阻への移行の目安です。妊娠悪阻は、全妊婦の1~2パーセントに出現するとされています。
妊娠悪阻への移行を防ぐためにも、つわりがひどいと感じた場合は、早めに産婦人科の医師に相談しましょう。
パートナーや職場の協力を得ながら心身の負担を軽減しよう
妊娠して間もなく、半数以上の女性につわりが出現します。症状の始まり方や程度に個人差はありますが、思い通りに体が動かなくなり、日常生活に大なり小なりの影響が出てくるでしょう。無理して悪化すると、妊娠悪阻に移行するおそれもあります。
職場やパートナーの理解やサポートを得ながら負担を軽減してください。家事はなるべくパートナーに協力してもらい、仕事も調整可能なら積極的に休みを取りましょう。大切な新しい命を宿している体を十分にいたわって、周囲の助けを得ながら、つわりのつらい時期を乗り越えてください。