ほ乳びんの洗い方と消毒方法|赤ちゃんのために清潔な状態をキープ!
監修:古市 菜緒
- プロフィール
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助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。
初めての赤ちゃんのお世話、きっといろいろなことが心配になるでしょう。ミルクを飲むときに息苦しくない?げっぷしてくれないけど大丈夫?沐浴のお湯が熱すぎない 目や耳にお湯が入ったらどうしよう……など、後から考えるとナーバスすぎたと思えるほど。赤ちゃんの安全を願うゆえの親心ですよね。
赤ちゃんが口に含む「ほ乳びん」の衛生も、心配の対象になると思います。今回の記事では、ほ乳びんの洗浄や消毒がなぜ必要か、適切な洗浄や消毒の方法を詳しく解説していきます。そして、家事や育児、仕事で毎日大忙しのママにとっては、時短も大切。消毒をいつまで行えばよいのか、手軽に消毒できる方法なども解説しています。ぜひ参考にしてください。
知っておきたいほ乳びんの洗浄の基本
ほ乳びんは、洗剤で洗った後、消毒してよく乾燥させてから使います。ほ乳びんを細菌やウイルスから守り、衛生的な状態に保つためには、①洗浄(汚れを洗い流す)、②消毒(細菌やウイルスの感染力を弱める)、③乾燥(細菌を繁殖させない)の3つのプロセスが必要です。
ほ乳びんを洗浄・消毒する理由
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫力や回復力が弱く、細菌やウイルスなどの感染から守る必要があります。特にミルクは栄養が豊富なために雑菌が繁殖しやすく、ミルクが残らないように十分に洗浄したうえで、消毒をする必要があるのです。
なお、洗浄と消毒は、次のように区別されます。
洗浄
洗浄は、水や洗浄剤などを使った汚れの除去をいいます。細菌やウイルスは残ります。
消毒
消毒は細菌やウイルスなどの病原体の数を大きく減らし、感染力を奪う処置をいいます。滅菌は消毒と違い、病原体すべてを殺滅する処置です。なお、殺菌は数にかかわらず菌を殺すことを指します。
2007年には、世界保健機構(WHO)が赤ちゃんの人工ミルクの調乳や保存に関するガイドラインを公表し、厚生労働省も注意喚起をしています。ガイドラインには「乳児への哺乳と調乳に使用されたすべての器具を次の使用前までに徹底的に洗浄及び滅菌*1することは非常に重要」と書かれていることから、ほ乳びんの洗浄・消毒は家庭でも取り組むことが大切です。
参考: 厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて」
*1:ここでの滅菌は医療者向けの表現で、一般家庭では消毒が当てはまります。
ほ乳びんの消毒はいつまで必要?
生まれたばかりの赤ちゃんは、ママからIgG抗体という免疫を受け継いでいますが、IgG抗体は日に日に減少していき、生後6か月ごろにはなくなってしまいます。一方、赤ちゃんが免疫力を持ち始めるのは、生後3か月ごろからです。
そのため、生後3~6か月ころまでは、消毒を行ったほうがよいでしょう。生後5~6か月以降になれば徐々に抵抗力もついてきますし、細菌やウイルスが体内に入ることでできる免疫力(獲得免疫)もついてきます。また、離乳食が始まり、指やおもちゃなどいろいろなものを口に入れ始める時期ですから、ほ乳びんを消毒する意味合いも薄くなります。
なお、消毒をやめた後も、洗剤とお湯でよく洗い、雑菌が繁殖しないようにしっかりと乾かしましょう。
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ほ乳びんの洗い方
ほ乳びんは、雑菌の繁殖を防ぐために、まずはしっかりと洗浄することが大切です。また、赤ちゃん用なので、洗浄剤にも気をつけたいところ。できればほ乳びん洗い専用の商品を使ったほうが、安心できるでしょう。
ここでは、ほ乳びんの洗い方を3つのSTEPに分けて詳しく紹介していきます。
STEP1.水やぬるま湯で汚れをすすぐ
飲み終わったほ乳びんは、残ったミルクが付着しないよう、なるべく早めにすすぎます。パーツをすべて分解して、水やぬるま湯で流しましょう。
粉ミルクなどの人工ミルクだけでなく、母乳を使う場合も同様です。ミルクは固まりやすく、すぐにこびりついてミルクかすになってしまいます。ミルクかすは、雑菌の繁殖の温床です。
すぐに洗えないときは、パーツを分解したうえで、水やぬるま湯にひたしておきましょう。
STEP2.洗剤でほ乳びんのパーツを洗う
ほ乳びんや乳首、キャップ、フードを食器用洗剤とブラシで洗っていきます。
食器洗い用のスポンジやブラシでもよいですが、ほ乳びんが傷ついたり、びんの底まで洗えなかったりするため、専用のブラシを使うとよいでしょう。
ガラス製のほ乳びんの場合はナイロンブラシ、プラスチック製の場合はスポンジブラシを使うのが一般的です。プラスチック製は傷がつきやすく、傷にミルクかすがたまると雑菌の繁殖の原因になるため、スポンジを使います。
汚れが残りやすいのは、びん(ボトル)の底や乳首です。洗い残しがないように注意して、すみずみまで洗いましょう。乳首も専用のブラシを使うと、吸い口の奥まで洗えて便利ですし、シリコンゴムを傷つけなくてすみます。
STEP3. 水やぬるま湯で洗い流す
パーツを洗い終わったら、それぞれ洗剤が残らないように流水で十分にすすぎます。続いて消毒を行い、十分に乾燥させればほ乳びんの洗浄は終了です。続いて消毒を行いますが、その具体的な方法は、次で紹介します。
ブラシは使い終わったらしっかりすすいで乾かしましょう。ブラシに雑菌が繁殖することも多いです。
なお食洗器を使用してもよいですが、汚れが残りやすく熱で乳首の素材が傷んでしまうことがあるため、あまりおすすめできません 。また、食洗器の使用後も消毒は行います。
外出時はどうする?
お出かけの際、ほ乳びんの洗浄や消毒をどうするかは、ママ・パパの悩みの一つのようです。外出時は、清潔なほ乳びんを数本持っていき、ミルクを飲ませたら、できるだけ早めにすすいで残ったミルクを洗い流します。帰宅後、もう一度、洗剤で洗って、消毒するとよいでしょう。
また、外出用に汚さずに授乳できるアイテムや、乳首洗いと、びん(ボトル)の中に入れて振るだけで洗浄できるクリーナーがセットになった商品も市販されているので、活用するのも手です。洗剤を小さな容器に入れて用意しておくと、外出先でもきれいに洗浄できます。
旅行の際は洗剤やスポンジ、消毒セットを持っていき、宿泊先で洗浄と消毒を行うとよいでしょう。
ほ乳びんの3つの消毒方法
ほ乳びんをしっかりと洗い終えたら、消毒に移ります。代表的な消毒方法には、煮沸消毒、薬液消毒、電子レンジ消毒の3つがあり、電子レンジ消毒は蒸気を使うスチーム消毒と同じ方法です。それぞれ方法と注意点を解説していきます。
なお、消毒を終えたほ乳びんはしっかりと乾燥させ、清潔な場所に保管しておきましょう。
煮沸消毒
洗い終えたほ乳びんを沸騰したお湯に入れ、消毒する方法です。自宅にある大きな鍋にお湯を沸かし、ほ乳びんの各パーツを沈めて3~5分ほど煮沸します(ガラス製のびんは7分程度)。お湯を沸かす時間と手間はかかりますが、コストをかけたくないママ・パパにおすすめです。
<注意点>
・シリコンゴムの乳首や薄いプラスチックのキャップ、フードなどの熱に弱い素材は、鍋の底につかないようにします。
・大きな鍋にお湯をたっぷり入れて、パーツがきちんと沈むようにしましょう。
・ガラス製の場合は、耐熱ガラス製かを確認しましょう。
・水は水道水でOKです。
・お湯からほ乳びんや乳首などを取り出す際は、やけどに気を付け、専用の器具を使って滑らないよう把持しながら取り出しましょう。
薬液消毒
洗い終えたほ乳びんを専用の薬液にひたして消毒する方法です。ほ乳びんやおしゃぶり、マグなど、赤ちゃんの口に入る用具専用の消毒液・除菌液が市販されています。使用方法はそれぞれですが、水で薄めた溶液にほ乳びんの各パーツを沈め、一定時間ひたせば消毒できます。細かな使用方法は各商品の説明書に従いましょう。
比較的手軽に行えるのがメリットですが、独特のにおいを気にするママ・パパもいます。薬液のにおいが気になる場合は、溶液から上げた後乾かす前に、水道水やお湯ですすぐとよいでしょう。消毒効果には影響なく、においを抑えることができます。
<注意点>
・使用量を守りましょう。
・消毒液にパーツがきちんと沈むようにしましょう。
・水は水道水でOKです。
電子レンジ消毒
洗い終えたほ乳びんを専用の容器や袋に入れて少量の水を加え、電子レンジにかけて煮沸消毒する方法です。専用の容器や袋は、レンジ消毒ケース、レンジ除菌パックなどの名前で市販されています。容器や袋に説明が書かれているので、その使用方法に従ってください。短い時間で消毒できるので、忙しいママ・パパにおすすめです。
<注意点>
・容器や袋の使用方法を守りましょう。
・専用の容器や袋を使用しましょう。
・消毒直後は蒸気でやけどをしないよう、取り扱いには十分注意しましょう。
無理なく続けられる方法で、ほ乳びんを清潔に
「ほ乳びんを洗浄・消毒する理由」で説明したとおり、赤ちゃんの健康を考えると、ほ乳びんの清潔の保持は重要です。生まれてしばらくは、洗浄、消毒、乾燥が欠かせません。
一方で、赤ちゃんのお世話で毎日忙しいママ・パパは、赤ちゃんの安全を気遣うあまり、気が休まらないこともあるかもしれません。だからこそ、ほ乳びんの洗浄は無理なく続けられることが大切です。いろいろな方法を紹介しましたが、自分に合った方法を探してみてください。。
ママ・パパの笑顔こそが、赤ちゃんを元気にしてくれます。無理なく、衛生的な環境を保って、赤ちゃんと過ごす毎日を楽しんでくださいね。