赤ちゃんの洗たく物は分けなくて大丈夫?気をつけたいポイント
監修:竹内想
- プロフィール
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2016年に医学部を卒業後、市中病院での初期研修や大学病院での研修を経て現在は皮膚科医として勤務。皮膚科医として専門的な内容をわかりやすく伝えることに重点をおき、WEB記事の作成や監修に携わっている。
「赤ちゃんの洗たく物は分けて洗うべき?」「家族の洗たく物と一緒に洗ってもよい?」
出産後、初めて赤ちゃんを家に迎えるママ・パパが、最初に悩む家事・育児の問題の一つかもしれません。赤ちゃんは着替えの回数が多いですから、洗たく方法をどうするか早めに決めておきたいですね。
インターネットを検索すると「分けるべき」「一緒でよい」と正反対の情報が見つかりますが、実際はどうなのでしょうか。本記事では、「分けるべきか否か」を解説していきます。赤ちゃんの衣類の洗たく方法やポイントも、合わせて紹介します。
赤ちゃんの洗たく物はほかの家族と分けたほうがよい?
赤ちゃんを家に迎えると、今までの家事に、新しい家事・育児が加わります。やることは少しでも減らしたいところですが、赤ちゃんと家族の洗たく物を一緒に洗ってもよいのでしょうか?
赤ちゃんの洗たく物は分けて洗うのがおすすめ
赤ちゃんの時期(新生児期・乳児期)はもちろん、肌のバリア機能が発達する3歳ごろまでは、家族の洗たく物とは分けて洗うことがおすすめです。分けたほうが良い理由と、家族の洗たく物と一緒に洗う場合の注意点を説明します。
赤ちゃんの肌トラブルを防止するため
赤ちゃんの肌はデリケートなため、洗たく洗剤や家族の衣類に付着した物質が刺激になり、トラブルを引きおこす可能性があります。
前述のとおり子どもの肌は3歳ごろまで未熟ですが、赤ちゃんの時期、特に新生児の肌はとてもデリケートです。新生児の皮膚の厚さは大人の半分程度の1.2ミリメートルしかありません。外部刺激から皮膚を守る角質層の厚さも大人より薄くなっています。肌が薄い分外部からの刺激に弱く、湿疹などの肌トラブル防止のため、できるだけ肌への刺激を避けるべきです。
新生児期を過ぎて乳児期(満1歳まで)になれば、家族の洗たく物と一緒に洗う家庭もあると思います。自治体や病院の母親教室などでも「汚れがひどくなければ一緒に洗ってよい」と指導する場合があるようです。
しかし、肌トラブル予防の観点から考えると、乳児期も別に洗ったほうが無難です。赤ちゃん用以外の洗たく洗剤の中には刺激の強い成分を含む場合もあり、すすぎ残しが肌トラブルの原因になるかもしれません。また、外で汚れた家族の衣服には、思わぬ化学物質やアレルギー物質が付着している可能性もあります。
衣類に付着している成分や汚れから守るため
赤ちゃん用の衣類は、繊維製品に含まれるホルムアルデヒドや有機水銀化合物などの化学物質の検出基準が厳しく設定されています(「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」)。しかしベビー服以外の新品の洋服には、そうした物質が使用されている場合があるので、新しい衣類は特に一緒に洗わないほうが安心です。
ベビー服にも若干の糊や化学物質が使用されている場合がありますから、新しい衣類を着せる前は水通し(事前の洗たく)を行いましょう。水通しの際は、赤ちゃん用の洗たく洗剤を使って、しっかり汚れを落としてあげましょう。
家族の洗たく物と一緒に洗う場合の注意点
家族の洗たく物と一緒に洗う場合は、汚れのひどいものや新しいものは別に分け、赤ちゃん用の肌に優しい洗剤を使うとよいでしょう。
新生児期を過ぎれば、洗たくについてはそれほどナーバスになる必要はないという意見もありますが、スタイやベビー服の袖、タオルなどをなめたり、口に入れたりする時期ですから、できるだけ安全に気をつけたいところです。
赤ちゃんの衣類はうんちや食べこぼしなどで汚れがひどい場合がありますから、一律に分けてしまったほうが、かえってチェックの手間などが少なくて済むかもしれませんね。
赤ちゃんの洗たく物はいつまでほかの家族と分けるとよいの?
決まりはありませんが、肌のバリア機能を担う角質層が大人と同じように成長する3歳くらいまでの間は、洗たくにもある程度、気を遣ったほうがよいでしょう。子どもの肌の様子を見ながら、徐々に家族の衣類と一緒に洗うように変えていくのがおすすめです。
洗たくで赤ちゃん特有の汚れを落とすコツ
赤ちゃんには、できるだけきれいな衣服を着せてあげたいもの。けれど、ベビー服はミルクの吐き戻しやうんちの漏れなどで、すぐに汚れてしまいます。そこでシミをつくらないコツを紹介します。
ミルク汚れ
母乳・ミルクは固まりやすいので、衣類についたらなるべく早めに洗い流しましょう。放置すると、母乳・ミルクに含まれる脂質やタンパク質が黄色いシミになってしまいます。脂質を落とすためには40℃程度の微温湯が効果的ですが、水でもOK。50℃以上のお湯は、タンパク質を凝固させてしまうので使いません。
洗い流したあとは、あまり時間をおかずにアルカリ性の洗剤や重曹などで下洗いし、つけおきをします。アルカリによってタンパク質は分解され、脂質は中和されて汚れが落ちやすくなります。つけおきをしたあとは、洗たくネットに入れて通常どおりの洗たくを行います。
すでに汚れが固まっていたり、黄ばみが見られたりするようなら、酸素系漂白剤につけおきをするとよいでしょう。赤ちゃんの肌着にも使える製品もあります。塩素系漂白剤は、色柄物には使えず、刺激も強いので避けましょう。
うんち汚れ
うんち汚れは、すぐに着色しやすいのが特徴です。気がついたらすぐに便をふき取り、石けんで手洗いしましょう。うんちの色は、色素「ビリルビン」によるもの。すぐに落とさないと、黄色いシミができてしまいます。またニオイも染みつきやすいです。
うんち汚れはタンパク質が中心ですから、アルカリ性である石けんの使用でOKです。また、熱で固まらないように水か40℃以下の微温湯を使います。重曹を加えたぬるま湯につけおきするのも効果があります。
手洗いしたあとは、通常どおりの洗たくでOKです。ビリルビンによる黄ばみは、紫外線によって消えます。少し黄色が残る程度なら、天日干しをしっかり行いましょう。それでも黄ばみが落ちないなら、酸素系漂白剤を使います。
赤ちゃんの衣類を洗たくする際に気をつけたいポイント
家族の洗たく物と分けるにせよ、一緒に洗うにせよ、赤ちゃんの敏感でデリケートな肌を守るために重要な洗い方や洗たくに関するポイントを紹介します。
刺激の強い洗剤は避ける
すすぎ残しが肌トラブルの原因になる可能性があるため、肌への刺激が少ない無添加の洗剤を使ったほうが無難です。香りも少ないか無香料がよいでしょう。購入前に表示を確認してください。
たとえば、大人用の洗剤には衣類を白く見せるために蛍光剤が含まれているものがあります。しかし、蛍光剤は「食品衛生法」などで、おむつやふきん、ガーゼや包帯など、肌や口に触れるものへの使用は禁止されています。
ですので、「いつも自分が使っているから大丈夫」と思わずに、赤ちゃんには赤ちゃん用の洗剤を使ったほうが安心でしょう。
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柔軟剤は避けたほうがベター
一般的な柔軟剤の主成分は特殊な界面活性剤(合成界面活性剤)で、洗たく後も界面活性剤分子が残る設計になっているため、赤ちゃんへの使用は避けたほうが無難でしょう。柔軟剤の「繊維をやわらかくする効果」は、界面活性剤分子によるものです。
赤ちゃん用の洗剤には、柔軟剤なしでも洗たく物がふっくらした仕上がりになるもの(「アラウ.ベビー 洗たくせっけん」など)を選ぶのもよいでしょう。
洗剤の使用量を守る
洗たくをするときは、規定の使用量を守ることが重要です。先ほど説明したように、洗剤のすすぎ残しがないようにする必要があるからです。
すすぎと乾燥は念入りに行う
洗剤が残らないようにすすぎは十分に行いましょう。洗剤は顆粒タイプよりも液体タイプのほうが溶けやすいため、すすぎ残しが少ないかもしれません。
また、乾燥も大切です。カビやダニの発生を防ぐために、しっかりと乾かしましょう。花粉やPM2.5(微小粒子状物質)、排気ガスなどが多くない環境ならば、天日干しで殺菌をしたいところです。室内干しでも、部屋の換気をし、洗たく物の通気を良くして、きちんと乾かせば問題ありません。
熱殺菌ができる乾燥機の使用もよいですが、綿やガーゼ素材は縮みやすく、レースが形崩れしやすいなどのデメリットもあるので、注意しましょう。
洗たく槽の掃除を定期的に行う
洗たく機の洗たく槽の裏側に汚れやカビ、雑菌などが付着していると、洗たく方法や洗剤に気を遣っても台無しになってしまいます。定期的に掃除をしましょう。乳児期が過ぎるまでは、一般のクリーナーを使わず、酸素系漂白剤など刺激の少ないタイプを使用したほうがよいでしょう。
赤ちゃん用洗剤の使用が安心
「赤ちゃんと家族の洗たく物を分けるべきか否か」への回答は、「赤ちゃんの肌が成長する3歳ごろまでは分けることがおすすめ」です。少しずつ家族の洗たく物と一緒に洗って様子をみていきますが、その際も洗剤のすすぎ残しには注意が必要です。一方で分けて洗うことが難しい場合は、家族の洗たく物もまとめて赤ちゃん用の洗剤を使うのはいかがでしょうか。子育てで大変な時期。余計な心配や負担も減って、おすすめかもしれません。