赤ちゃんの「よだれかぶれ」はなぜ起こる?原因や症状のケア方法
監修:古市 菜緒
- プロフィール
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助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。
赤ちゃんの肌はすべすべできれいな印象があるかもしれませんが、実はボツボツやかぶれ、かさぶた、ただれ、カサカサなどのトラブルが多いのです。なぜなら、赤ちゃんの皮ふの厚さは大人の半分程度で、うるおいを保つ角質層の厚さも7割程度しかありません。肌を守るバリア機能も未熟で、刺激にも弱いのです。
「よだれかぶれ」は、乳児期(1歳未満) に多い肌トラブル(乳児湿疹)の一つです。
おむつかぶれ同様に赤ちゃんにはよくみられるトラブルではありますが、突然、赤ちゃんの口の周りが赤くなり、ブツブツができたり、ただれたりすると、ママさんパパさんは心配になってしまうかもしれません 。
今回の記事では、よだれかぶれの症状、起こる原因、家庭での対処法やケア方法、病院に行く目安などを詳しく紹介します。
赤ちゃんによくある「よだれかぶれ」とは?

よだれかぶれとは、主によだれ(唾液)によって生じる皮ふ炎です。よだれが出やすくなる生後5~6か月ごろによくみられ、口周りに赤い湿疹ができたり、発疹(ブツブツ)ができたりします。
これらの肌荒れは唾液に対する皮ふのアレルギー反応であり、専門的には「唾液とそれに含まれる物質による刺激性接触性皮膚炎」とされます。
見た目は、汗疹(あせも)やアトピー性皮膚炎によく似ており、繰り返すとカサカサした乾燥肌になったり、あごから首まで広がったり、かゆみを感じている様子がみられたりするので、特別な病気を心配するママ・パパも多いようです。
【よだれかぶれに関する気になる疑問】
Q. そもそも、赤ちゃんはどうしてよだれが出やすいの?
唾液の分泌量は、歯が生え始め、離乳食を開始する時期の生後5~6か月くらいから増えます。一方で、よだれをうまく飲み込む動作、口を閉じる力が未発達なため、よだれが口の中にあふれ、外に漏れ出てしまう訳です。
Q. よだれかぶれはいつごろ落ち着く?
唾液をうまく飲み込めるようになってよだれが減る2歳ごろまでには 落ち着くケースが多いです。皮ふが成長し、バリア機能が大人の肌に近づくことも、よだれかぶれが治まる理由の一つですが、アレルギー反応の一種であるため、すぐにきれいになる訳ではなく徐々に軽快していきます。また、個人差もあります。
よだれかぶれが生じる主な原因

よだれかぶれは、名前の通り「よだれにかぶれた状態」で、主に唾液に対するアレルギー反応ですが、原因はそれだけではありません。よだれかぶれを生じさせる原因を「化学的刺激」と「機械的刺激」の両面から解説します。
●よだれや食べかす
口から流れるよだれ(唾液)そのものに含まれる酵素などの物質も皮ふそのものも肌への刺激になりますが、唾液に含まれる母乳やミルク、離乳食などの食べかす(物質)も、かぶれを引き起こす原因です。
これら物質による皮ふへの刺激を「化学的刺激」とよびます。物質は成分レベルに分解すれば「化学物質」になるためです。
よだれかぶれが出やすくなる生後5~6か月以降の赤ちゃんの肌は「化学的刺激」に弱くなっています。
生まれてすぐの新生児は母体から受け継いだホルモンの影響で皮脂の分泌が高まりますが、生後3か月を過ぎるとホルモンの効果が薄れて、一生のうちに最も皮脂分泌の少ない時期に入るのです。皮脂は、肌の表面を薄く覆って皮ふを保護する役割を持ちます。
加えて、角質層の機能も不十分なため、バリア機能そのものが未熟な状態です。
よだれかぶれは、唾液が原因ではなく、口の周りについた母乳やミルク、食べ物の成分による「食物アレルギー」である可能性もあります。
●口を拭う際の摩擦
よだれや食べかすを拭き取る際の摩擦も、よだれかぶれの原因ですになります。摩擦は、皮ふに物理的な外力を加える「機械的刺激」になり、皮ふの組織を破壊して炎症をおこしやすくします。
赤ちゃんは皮ふが薄く、機械的刺激に脆弱です。また、皮脂の分泌が低下して乾燥しがちなことも、外力に弱い原因になります。
よだれかぶれの症状をケアする方法

よだれかぶれが生じたとき、ケア方法を間違えると悪化の原因になります。正しいケアをしっかりとチェックしておきましょう。
●肌を清潔に保つ
よだれかぶれは、皮ふのアレルギー反応です。アレルギーの原因(アレルゲン)となる、よだれや食べ物が口の周りにつかないようにすることが第一。
母乳やミルクを飲むとき、離乳食を食べるときなどは、できるだけ口の周りに食べ物がつかないようにしましょう。また、付着したよだれや食べ物を放置せず、優しく洗い流したり拭いたりして肌を清潔に保ちましょう。
拭き取る際は、決してゴシゴシと強く拭かないように注意し、濡れたタオルやコットン、ガーゼ、ティッシュなどで軽く押し拭きします。
おしゃぶりをくわえたままでいるとよだれが出やすくなるので、注意してください。
●こまめに肌を保湿する
皮ふの水分と油分のバランスが崩れると、肌が荒れやすくなります。また、乾燥は肌のバリア機能を低下させる原因の一つです。そのため、患部は赤ちゃん用のミルキーローションなどでこまめに保湿してあげましょう。
定番のワセリンは皮膚を油分で保護するだけですが、ミルキーローションなら、水分を補い、 植物オイルなどでふたをして肌を乾燥させないようにする役割があります。
沐浴後やお風呂上がりも、落ちた皮脂を補うために使用するとよいでしょう。また、よだれや食べかすから肌を保護するために、食事前後に塗る方法もあります。
【よだれかぶれに関する気になる疑問】
・病院に行く目安は?
お口の周りを清潔に保ち、なるべく刺激しないようにしても赤みが強いままだったり、かぶれの部分が広がったりする場合は、一度、病院やクリニックを受診するとよいでしょう。
受診の目安としては、1週間程度様子をみてその間に症状が悪化する場合は一度相談するとよいでしょう。悪化はしないが、ずっと症状が続く場合も、定期の予防接種の際や、健診の際に必ず伝えてください。
よだれかぶれは自然に治るケースが多いものの、悪化すると治りにくくなる場合もあります。炎症を抑えるステロイド軟膏などの塗り薬が処方されて治療が必要なケースもあるため、小児科か皮膚科の医師に相談してみてください。その際は、いつごろ発症したかや、症状の進行具合など医師にできるだけ細かく伝えられるようにしておきましょう。
よだれかぶれの予防とケアには「清潔」と「保湿」を
「よだれが出るようになったと思ったら、口周りが真っ赤!でも拭いてもよだれが垂れ続ける…」なんて困っているママさんパパさんも、今回の記事で少し安心されたでしょうか。
よだれかぶれは、口の周りについた唾液や食べかすなどに対するアレルギー反応です。口の周りを清潔に保ち、ミルキーローションなどでこまめに保湿してあげると、徐々に軽快することも多いです。それでも改善がみられなければ病院やクリニックへの受診を考える目安になります。
赤ちゃんの肌は未熟でデリケートなため、口の周りを清潔にする際は優しく洗い流してあげましょう。拭くときはやわらかいタオルやガーゼ、ティッシュで軽く押し拭きするのがポイントです。
生後5~6か月ごろに増えるよだれは、赤ちゃんの成長の証でもあります。体内で様々な消化酵素が作られて唾液の量が増え、食べ物を消化・吸収できる機能が整った合図なのです。適切なスキンケアを行いながら、優しく見守ってあげましょう。