赤ちゃんのあせもを治したい!乳幼児にできやすい原因やケア方法
監修:古市 菜緒
- プロフィール
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助産師としてこれまで10,000件以上の出産に携わり、5,000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。助産師のレベルが世界的に高いAUSとNZで数年生活、帰国後バースコンサルタントを起ち上げる。現在は、高齢出産の対象であるOVER35の方にむけた「妊娠・出産・育児」をサポートする活動を行う。その他、関連する記事の執筆やサービス・商品の監修、企業のセミナー講師、産科病院のコンサルタントなどを務める。
すべすべだった赤ちゃんの肌にブツブツができ、しだいに真っ赤に──。かゆそうで機嫌が悪く、ぐずりがち。見ていてかわいそうだけど、どうすればよい?
赤ちゃんは新陳代謝が活発で汗をかきやすいため、「あせも」はよくみられる肌トラブルの一つです。かゆみが原因で頻繁に泣いて眠れなくなったり、炎症が全身に広がったり、掻きむしってとびひ(伝染性膿痂疹)になったりと、たかがあせもといえないケースも出てきます。あせもは夏だけでなく、季節を問わず発生するため、注意が必要です。冬の寒く乾燥した時期にも発生します。
今回は、赤ちゃんのあせもの特徴や原因、ケアの方法から受診の目安まで詳しく紹介するため、参考にしてください。
赤ちゃんにできるあせもの特徴

あせもは、汗によってできる皮ふのブツブツ(発疹)です。専門的には「汗疹(かんしん)」と呼ばれます。
多量の発汗により汗腺の管(汗管)に汗や塩分が詰まり、周囲の組織を圧迫してふくらんだり、汗管が破れて汗が漏れ出したりすることがあせもの原因です。皮ふの汚れ(皮脂汚れ・ほこりなど)も、汗管が詰まる要因になりえます。
頭・顔・首・肘の内側、足の付け根、お尻、膝の裏側など、汗腺が多い場所、汗が溜まりやすい場所が、あせものできやすい部位になります。
なお、赤ちゃんの肌のトラブルは「乳児湿疹(にゅうじしっしん)」と総称されますが、あせもとおむつかぶれは含まないことが多いです。乳児湿疹は皮脂分泌の過剰で発症する皮ふ疾患(脂漏性皮膚炎や新生児ニキビなど)や乳児アトピー性皮ふ炎を主に指します。
赤ちゃんにあせもができやすい理由は?

赤ちゃんになぜあせもができやすいか、どのような種類のあせもができるかを解説します。
●あせもができやすい理由
赤ちゃんは体温調節機能が未熟で、主に発汗によって体温を調整します。しかも、赤ちゃんの汗腺の数は大人と変わらず数百万個もあるため汗腺が密集しており、汗の量も多くなりがちです。
あせもは、汗をかきやすい夏場、厚着や重ね着をしたり暖房を使用したりする冬場にできやすいイメージがありますが、季節を問わずに生じます。赤ちゃんは骨格が小さく、関節部分を中心に皮ふどうしが重なるため、そこに汗が溜まりやすいのです。また、寝汗による背中のあせもにも注意が必要になります。
●赤ちゃんがなりやすいあせもの種類
水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)
汗管に詰まった汗が漏れ出して皮ふの浅い部分(角質層)に溜まるあせもです。数mm程度の大きさの透明または白っぽい水ぶくれ(小水疱)が多数みられ、赤みはないため「白いあせも」と呼ばれます。水ぼうそうにも少し似たブツブツです。
発疹は炎症を伴わず、かゆみもありません。軽度のあせもなので、肌を清潔に保てば1日~数日で自然に消滅するケースが多いです。
紅色汗疹(こうしょくかんしん)
一般的によくみられる、かゆみと炎症を伴ったあせもです。水晶様汗疹が「白いあせも」と呼ばれるのに対し、「赤いあせも」と呼ばれます。汗管に汗が詰まってふくらみ、周囲の組織を圧迫して炎症を起こした状態です。数mm程度の小さな赤いブツブツや赤みを帯びた小さな水ぶくれが多発します。
汗に含まれる塩分などによる「かぶれ」も同時に生じている場合があり、汗がしみて痒みや痛みが出る場合もあります。掻きむしったりすると皮ふ炎が悪化し、とびひ(伝染性膿痂疹)になるケースがあるので注意が必要です。炎症やかゆみを抑える塗り薬や軟膏を使用する場合があります。
このほか、皮ふの深い部分にできる深在性汗疹(しんざいせいかんしん)がありますが、赤ちゃんに生じることは少ないです。
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赤ちゃんのあせものケア&予防方法
家庭でできるあせものケアや対処法、予防方法を紹介します。
●汗をかいたまま放置しない
かいた汗を放置すると、汗が蒸発して残った塩分や汚れが汗管を塞ぎ、あせもの原因になります。また、汗に含まれる塩分がかぶれを引き起こすこともあります。赤ちゃんが汗をかいていたら、こまめにふき取りましょう。特に、腕の足の付け根、手首、足首、二重顎などの皮ふが重なる部分には汗が溜まりやすくなっています。
やわらかい布をポンポンと肌に押し当てて汗を吸い取るように拭います。赤ちゃんの肌はデリケートなため、強くこすらないように注意が必要です。
衣類が汗で濡れていたらこまめに着替えをしましょう。特に肌着は汗に濡れたまま着続けていると、あせもの原因になります。
●肌を清潔にする
ふき取るだけでは汗の塩分や汚れが残ります。1日1回はシャワーや沐浴で洗い流しましょう。汗をたくさんかく場合や夏場などは1日2~3回シャワーで汗だけ流すのもOKです。
石けんやボディソープの使用は1日1回にとどめ、洗浄成分が肌に残らないようにしっかり流すことが大切です。シャワー後には肌にやさしい無添加のローションなどでしっかり保湿しましょう。
●室温を適切にする
前述の通り、赤ちゃんは体温調節機能が未熟なため、汗をかくことで体温を調整しようとします。大人よりも汗をかきやすいため、室内の温度には注意が必要です。大人が赤ちゃんの様子(発汗や顔のほてり、体温など)をこまめに観察し、エアコンなどで室温を調節してあげましょう。
高温・多湿を避けることがあせも対策の基本です。湿度にも気を配りましょう。赤ちゃんの肌に適した湿度は50~60%といわれています。適した室温に関しては以下記事をご覧ください。
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●吸湿性や通気性のよい衣類を着せる
重ね着をさせたり熱がこもりやすい衣服を着せたりすると、室温は高くないのにたくさん汗をかいてしまう場合があります。
また、吸湿性の悪い衣服の場合、汗がずっと肌の表面に残ってしまい、あせもやかぶれの原因になります。
特に肌に直接ふれる衣服は、むれやすいナイロンやポリエステル素材ではなく、通気性や吸湿性のよい綿(コットン)や麻素材の衣類がおすすめです。
また、赤ちゃんは大人より体温が高いため、大人より1枚少ない程度を目安にした薄着を心がけましょう
●適度に保湿する
肌のバリア機能を整えることも、あせも対策には重要です。沐浴・入浴後の保湿ケアは毎日行いましょう。汗をかきやすい夏場も同様です。肌のバリア機能が脆弱だと、炎症やかぶれが生じやすくなります。汗を洗い流したシャワー後も欠かさず保湿を行うことが大切です。
保湿アイテムはいろいろありますが、油分の多いクリームではなく、水溶性のさらっとしたベビーローションでケアしてあげるとよいでしょう。赤ちゃんの肌にやさしい無添加タイプを選ぶのがおすすめです。
昔はあせも対策にベビーパウダーを塗布する家庭も多かったですが、現在は推奨されていません。
ママ・パパが気になる赤ちゃんのあせもに関する疑問
あせもで困るのは、赤ちゃんが自分で掻いてしまうときでしょう。掻くと治りにくくなりますし、感染のリスクもあります。また、どのくらいの症状・状態で医師に相談すべきかという「受診の目安」も悩みどころです。ママ・パパによくある疑問について解説します。
Q1.赤ちゃんが自分であせもを搔いてしまうときは?
前述の通り「赤いあせも」はかゆみを伴います。汗がしみたりかぶれがあったりすれば強いかゆみになることも。あせもを掻きむしってしまうと皮ふ炎が悪化し、傷が生じて皮ふが細菌に感染すると、とびひ(伝染性膿痂疹)が生じることもあります。とびひはブドウ球菌や溶血性連鎖球菌による皮ふの感染症で、赤いできものが皮ふにたくさんできる病気です。接触によってうつり、火事のようにあっという間に広がるため、「とびひ」と呼ばれます。
赤ちゃんがあせもの部分を掻くようなら、爪を切る、ミトンをつける、患部を冷やす、医師に相談する(かゆみを抑える塗り薬・軟膏を処方されることがある)などの対策を行いましょう。
Q2.病院に連れていくタイミングは?
あせもが悪化してかゆみが強くなると、赤ちゃんが掻きむしってさらに治りにくくなります。とびひなどの皮ふ感染症にかかるおそれもあるでしょう。
また、発疹があせもではなく、ほかの皮ふ疾患によるものの可能性もあります。たとえば、水晶性汗疹の場合、手足口病や水ぼうそうと発疹が似ているため、熱が出なければ見分けがつきにくいです。
目安として、次の状態になったら病院やクリニックを受診し、小児科や皮ふ科の医師に相談するとよいでしょう。
1)清潔やスキンケア、室温・衣類などの対策を続けたのに数日たっても治らない
2)症状が悪化している(あせもの範囲が広がっている、ただれている、膿んでいるなど)
3)かゆみが強そうで治まらない
あせも対策に必要なのは清潔と保湿ケア
せもは、赤ちゃんに比較的よくみられる皮ふトラブルですが、解説したように炎症が広がったり、とびひなどの皮ふ感染症につながったりするおそれがあるため、できる限り予防したいところです。できてしまった場合も、ブツブツや赤みが広がらないうちに治しておきましょう。
そこで重要になるのが、清潔と保湿です。「かいた汗をそのままにしない」という考え方で、汗をこまめにふき取ったり、シャワーで流したりして肌を清潔な状態に保ちます。入浴やシャワー後は、保湿も行いましょう。
あせも対策なのに夏も保湿?と思われるかもしれませんが、夏も行います。乾燥は赤ちゃんのデリケートな肌の大敵。夏でもお風呂上がり、シャワー上がりは濡れた皮ふからたくさんの水分が蒸発するため、肌のバリア機能を維持するために保湿が大切になるのです。